【獣医師監修】本格的な冬が来る前に!
秋冬の「おしっこの病気(尿石症・膀胱炎)」と水分補給の3つのコツ

11月に入りましたが、今年はまだ日中は暖かい日も多いですね。しかし、油断は禁物です。これから急激に空気が乾燥し、朝晩の冷え込みが本格化してきます。実はこれからの時期、動物病院の診察室で急激に増えるのが、犬や猫の「おしっこのトラブル(尿石症や膀胱炎)」です。
寒さを感じ始めると、動物たちは本能的に動くのを面倒がり、水を飲む量が減ってしまいます。さらに、高層マンションなど気密性の高い室内は、床暖房やエアコンを使い始めると想像以上に乾燥します。この「飲水量低下」と「乾燥」の組み合わせが、ペットの泌尿器に深刻なダメージを与えます。
■ なぜ「水分不足」が細菌繁殖や膀胱炎を引き起こすのか?
水を飲まないことが病気に直結するのには、明確な医学的理由があります。主に以下の2つのメカニズムが、おしっこのトラブルを引き起こします。
1. 「自浄作用(洗い流す力)」が失われるから
健康な動物でも、日常的に尿道口からわずかな細菌が侵入することは珍しくありません。通常であれば、定期的におしっこをすることで、これらの細菌が膀胱内で増える前に勢いよく体の外へ「洗い流す」ことができます(自浄作用)。
しかし、水分不足でおしっこの回数が減ると、細菌が排出されず膀胱内に長時間とどまることになります。暖かく老廃物が豊富な膀胱内は、細菌にとって絶好の培養炉です。洗い流されなかった細菌はあっという間に増殖し、「細菌性膀胱炎」を引き起こしてしまうのです。
2. 「濃縮された尿」がデリケートな粘膜を傷つけるから
体内の水分が足りないと、体はこれ以上水分を逃がさないようにおしっこをドロドロに濃縮します。ミネラルや老廃物が異常に濃くなった強い尿は、膀胱のデリケートな粘膜を刺激し、直接傷つけてしまいます。
傷ついて炎症を起こした粘膜は防御力が落ち、より細菌感染を起こしやすくなります。さらに、濃くなったミネラル同士がくっついて結晶化することで、「尿石(結石)」へと変化してしまうのです

■ 気づきにくい「隠れ脱水」と初期症状
「トイレに何度も行くのに少ししか出ない(頻尿)」「おしっこをする時に痛そうに鳴く」「おしっこに血が混じる」といった症状が見られたら、すでに病気が進行しているサインかもしれません。
特に猫は痛みを我慢して隠す習性があるため、飼い主様が異変に気づいた時には重症化しているケースが多々あります。愛犬・愛猫が冬の「隠れ脱水」に陥っていないか、日々のトイレ掃除の際に、おしっこの量と色(いつもより黄色が濃くないか)をしっかりチェックすることが重要です。
■ 冬場に無理なく水分をとらせる3つの工夫
ご家庭ですぐに実践できる水分補給の工夫をご紹介します。
1. 飲み水を「室温」に戻してあげる
冬場の水道水はキンキンに冷えていることがあり、それが胃腸を刺激して動物が水を飲むのを敬遠する原因になります。わざわざお湯を作る必要はありませんが、冷たい水道水をそのまま与えるのではなく、しばらく部屋に置いて「室温(常温)」に戻したお水にしてあげると、胃腸への負担が減り、飲みやすくなります。
2. 水飲み場の数を増やす
「水を飲みたい」と思った瞬間に、わざわざ遠くまで歩かなくてもすぐ飲める環境を作ることが大切です。普段の場所に加え、暖かい寝床の近くや、よく通る廊下など、家の中に3〜4箇所ほど水飲み用の器を配置してあげてください。
3. スープやウェットフードは「別のお皿」で与える
どうしてもお水を飲まない場合は、犬用・猫用スープ(無添加のもの)や水分量の多いウェットフードを活用するのが効果的です。少し温めてあげるとお肉や魚の香りが強く立ち、食欲と同時に水分もしっかりとってくれます。
ここで獣医師から1つ重要な注意点があります。水分補給のためにドライフードに直接スープをかけてふやかしてしまうと、歯に汚れがこびりつきやすくなり、歯周炎(歯周病)の大きな原因になります。スープやウェットフードを与える際は、必ずドライフードとは「別のお皿」に分けて与えるようにしてください。

■ まとめ:毎日のトイレチェックが最大の予防
おしっこのトラブルは、放っておくと尿道が完全に詰まり、数日で命に関わる「尿毒症」を引き起こす危険性があります。
アニーマどうぶつ病院では、おしっこの量や色の変化など、ささいな違和感から病気を早期発見するための尿検査や超音波検査を随時行っています。「最近あまり水を飲んでいないな」「おしっこの匂いや色が濃いな」と感じたら、症状が出る前でもお気軽にご相談ください。厳しい冬の乾燥が来る前に、大切なご家族の健康をしっかりと守っていきましょう。
